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響きの住処 | Gradation of echo (2018)

響きのグラデーションをつくる

建築音響の世界では、反射音が多く残響時間が長いことを「ライブ」、反対に反響音が少なく残響時間が短いことを「デッド」という言葉を用いて音空間を表現する。
室内の残響時間を求める式にはセービンの残響式があり、室の気積が大きいほど、あるいは、仕上材の吸音率が小さいほど、残響時間は長くなるというものだ。

この住宅プロジェクトでは、空間の気積や配列、仕上の吸音率といった残響時間に関わる要素を操作することで、「ライブ」と「デッド」の概念を空間に取り込み、響きのグラデーションをつくることを試みた。

リビングは床を300mm下げて囲われた落ち着きのある居場所としつつ、吹き抜けを設けて気積を大きくし、床を磁気質タイル貼りとすることで「ライブ」な空間としている。さらに、書斎兼サンルームや主寝室の室内建具を開け放つと、それらがひと繋がりの大きな空間となり、異なる階に居ても家族の気配を感じながら過ごすことができる。1階のLDK は2階のバスコートまで繋がるため、中間期には風の通り道としても機能することが期待される。

ダイニングとキッチンは天井高さを2200mmと低めに設定し、こもり感のある空間をイメージしている。天井仕上に木を用いて吸音率を高め、やや「デッド」寄りの落ち着いた空間とすることで、家族でゆったりと食事や会話を楽しむことができる。

主寝室や各個室へはウォークスルークローゼットを通過してアクセスする形式をとっている。ウォークスルークローゼットには衣服が収納されるため、吸音率が高まり、極めて「デッド」な空間となる。このウォークスルークローゼットは、家の中のパブリックな領域とプライベートな領域を横断する際に場面を切り替える装置となり、音空間の微妙な差異は適度な距離感を生む役割を果たす。

2階バスコートの床はフロアレベルより400mm高くし、手すり壁は安全性、音の反射、空への眺望との兼ね合いからフロアレベルより1500mmの高さとしている。浴室に囲まれ感を出してゆったりくつろげる空間とし、窓を開放した時にも程良く「ライブ」な状態を保つことで、浴室特有の反響を感じ取れるように計画した。